-----活動報告書7 3 平成29年度支援状況 3.1 障害のある学生・教職員への支援 3.1.1 支援概要  障害等がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に学内における修学上必要な活動に相当な制限を受ける者で、本人が支援を受けることを希望し、かつバリアフリー支援室長がその必要性を認めたものに対し、各部局バリアフリー支援実施担当者と連携して、個々のニーズに応じた支援を実施した。  H28年4月1日に障害を理由とする差別の解消と推進に関する法律(障害者差別解消法)が施行され、従来は他部署で担われていた精神障害や発達障害においても身体障害のある学生と同様に部局・バリアフリー支援室・本部の連携による「支援の三角形」の体制の下、支援を行うこととなった。そのため昨年度には大幅な支援登録学生の増加がみられたが、本年度にかけてもさらに増加傾向であった。なお、全体的にバリアフリー支援実施担当者や他の相談窓口から、支援の対象となり得る学生がスムーズに支援室に誘導されるようになった印象がある。  障害のある教職員については、引き続きの継続的な支援とともに、バリアフリー支援室スタッフによる支援者派遣システムを試行した。また、今年度は新たな取り組みとして、支援室に支援登録する障害学生・教職員と、年度初めに面談を行うしくみとしたが、いずれもニーズや各部局の状況のバランスで、検討していく必要があろう。  なお、大学が事業として行う講習会やシンポジウム等に参加する一般の障害のある方に対する支援については、学内で理解が得られつつあるとは考えられるものの、周知が十分でなかった例もみられ、持続的な啓発の重要性が考えられた。 3.1.2 支援実施状況 (1)共通の支援 1)支援機器等の貸出 ※「3.3支援機器」参照 2)施設のバリアフリー検証と施設改善に向けた調整 3)非常用階段避難車 操作講習会の調整 4)資料電子化サービスの実施(附属図書館への協力) 5)休憩室の確保に向けた調整 (2)学生支援 1)授業時の配慮 履修相談、教室変更、優先席の設置、ノート作成、欠席時の配慮、途中退席時の配慮、課題提出の期間延長等 2)定期試験時の配慮相談 代筆試験、レポートへの代替、音声レポートへの代替、試験時間延長、教室変更、別室受験 3)通学にあたっての構内駐車スペース確保 4)キャンパス間移動のタクシー・介護タクシー手配 5)緊急災害時の避難マニュアルの作成に係る情報提供 -----活動報告書8 (3)教職員支援 1)授業の教室変更 2)業務端末の調整(PC画面読み上げソフト・マウスの検証) 3)通勤時の介護タクシー手配 4)専門的支援者の配置 5)会議、面談、研修時の情報保障(手話通訳、パソコン文字通訳、音声認識アプリによる字幕) 6)ビデオ通話システム配備 7)代理電話サービス(通訳オペレーターが「手話や文字」と「音声」を通訳するシステム)の導入 8)支援者派遣システム試行 9)階層別研修での配慮(テキストデータ化等) 10)構内環境案内 11)緊急避難対応に関する検証、調整 【図】障害のある学生への支援例:障害種別 共通 ・支援に関する相談 ・授業時の合理的配慮 ・試験時の合理的配慮 視覚障害のある学生 ・拡大読書器の貸出 ・教科書や資料の電子データ化(音声読み上げ) 聴覚障害のある学生 ・補聴援助システムの貸出 ・パソコンテイク ・音声認識アプリによる字幕 ・映像教材の字幕挿入 肢体不自由のある学生 ・施設改善 ・授業教室の変更調整 ・ノート作成 内部障害・慢性疾患のある学生 ・専用駐車場の設置 ・優先席の設置 ・実技のない身体運動科目の履修 発達障害のある学生 ・レポート提出期限の延長 ・代替コミュニケーション 精神障害のある学生 ・退室、再入室の許可 ・情報保障 ・別室受験 -----活動報告書9 3.2 施設整備  全学的施設整備については、部局管理とならない建物外の整備要望を施設部環境課に伝え、営繕・修繕実施要望事業の中で、可能な限りにおいて改善を進めた。来年度のバリアフリー化工事の予算要求のために、障害のある構成員から寄せられる要望や、キャンパス環境の整備に関する情報を集めて検討し、施設部に要望を伝えている。 (文章右側に杖を持って歩くことだまくんイラストあり)  今年度のバリアフリー改善状況は次の通りである。 No./改善点/改善箇所 1/道路劣化箇所の補修/法文2号館から正門および赤門への道路 2/災害時避難通路の補修/農学部3号館から動物医療センター周囲の道路 さらに、施設部や部局からのバリアフリー化工事に関する相談には、以下の通り対応した。 【表】バリアフリー化工事一覧 No./年月日/部局名/建物名・箇所/内容 1/2017年4月11日/文学部/法文1号館/入口スロープ、入口階段の改修・新設 2/2017年4月11日/文学部/法文2号館/入口スロープ、入口階段の改修・新設、アーケード照明の増設 3/2017年4月11日/附属図書館/ライブラリープラザ/誘導用ブロックの色と材質、設置箇所 4/2017年4月11日/薬学部/理学部化学本館/障害者専用駐車場マーク 5/2017年4月21日/附属図書館/総合図書館/西側エリア、入口から拡大読書器設置箇所の誘導用ブロック 6/2017年4月21日/附属図書館/アカデミックコモンズ/誘導用ブロック 7/2017年5月9日/文学部/法文1・2号館/入口スロープ 8/2017年5月16日/文学部/法文1・2号館/入口スロープ、手すり、照明 9/2017年5月18日/施設部計画課/文系総合研究棟/誘導用ブロック、多目的トイレ 10/2017年5月19日/文学部/法文1・2号館/入口スロープ 11/2017年6月2日/施設部計画課/アカデミックコモンズ/誘導用ブロック、EV、ガラス壁、サイン 12/2017年6月20日/教養学部/いちょう並木/誘導用ブロック 13/2017年6月30日/施設部計画課/文系総合研究棟/13階自動扉周囲の誘導用ブロック敷設 14/2017年7月5日/法学政治学研究科/法学部4号館/障害者専用駐車場マーク 15/2017年7月12日/施設部環境課/法文1号館/スロープ 16/2017年7月19日/学外設計事務所/中央食堂/エレベーター 17/2017年7月25日/施設部環境課/キャンパス内/誘導用ブロック 18/2017年7月25日/施設部環境課/山上会館/エレベーター -----活動報告書10 (【表】バリアフリー化工事一覧続き) No./年月日/部局名/建物名・箇所/内容 19/2017年8月10日/教養学部/KOMCEE East/教室K212入口段差 20/2017年8年25日/教育学研究科/文系総合研究棟/コロネードの段差、スロープ手すりほか 21/2017年8月25日/教育学研究科/赤門総合研究棟/看板 22/2017年9月20日/附属図書館/総合図書館/書架間のサイズ、エレベーター、手すり 23/2017年9月25日/農学生命科学研究科/フードサイエンス棟/多目的トイレサイン 24/2017年9月26日/教養学部/駒場Tキャンパス内/正門内誘導用ブロック周囲の立て看板 25/2017年10月6日/施設部計画課/理学部1号館/多目的トイレほか 26/2017年10月17日/附属図書館/総合図書館/誘導用ブロック 27/2017年10月17日/施設部計画課/理学部1号館/誘導用ブロック 28/2017年10月18日/施設部保全課/プレハブB棟/多目的トイレ、サイン 29/2017年10月18日/施設部環境課/山上会館/スロープ、EV 30/2017年11月27日/資産管理部管理課/目白台国際宿舎/バリアフリー対応ルームまでの通路、共用スペースの設備等 31/2017年11月30日/理学部/日光分園フィールドステーション/多目的トイレほか 32/2017年12月21日/附属図書館/総合図書館/入退館ゲート、北側階段、エレベーターホール前の階段 33/2018年1月15日/資産管理部管理課/目白台国際宿舎/バリアフリー対応ルーム 34/2018年1月15日/施設部保全課/プレハブB棟/多目的トイレ 35/2018年2月6日/資産管理部管理課/目白台国際宿舎/バリアフリー対応ルーム 36/2018年2月8日/施設部計画課/中央食堂/インターフォン 37/2018年2月21日/施設部計画課/中央食堂/ピクトグラム 3.3 支援機器 今年度に貸し出した支援機器等 補聴援助システム、音声認識アプリケーションソフト、ビデオ通話用機材(タブレット端末、ノートパソコン、音声認識専用マイク、Wi−Fiモバイルルーター、スピーカー)、拡大読書器(携帯・据置)、PC画面読み上げソフト、インターネット読み上げソフト、音声読み上げ対応メールソフト、画面拡大ソフト、OCRソフト、数式認識ソフト、数式文書読み上げソフト、点訳ソフト、点字ディスプレイ、小型暗室、非常用階段避難車、緊急避難用担架、緊急避難用ストレッチャー、災害時用バンダナ、懐中電灯、車いす、点字プリンター、マット、ベッド、パーティション、音声認識ソフト、音声認識入力用マイク、トラックボールマウス、Bluetoothマウス、リクライニングチェア 3.4 サポートスタッフ 3.4.1 活動状況 サポートスタッフの活動状況として、障害のある学生・教職員への直接的支援では、 ・肢体不自由のある学生に対する授業支援(ノート作成) ・肢体不自由のある学生に対する試験時支援(代筆) ・視覚障害のある学生への書籍・教科書等電子データ化作業 ・肢体不自由のある教員の授業に係る準備、片付け等 が主な活動内容であった。 -----活動報告書11 その他、 ・オープンキャンパス時のバリアフリー支援室 見学者対応(8月) ・バリアフリーマップ調査(柏キャンパス・白金台キャンパス)(9月) ・バリアフリー講習会『「社会人として働く」を考える』 企画・運営(3月) でも活動した。 3.4.2 募集、養成状況 活動別入門講座 本郷にて、6月に「PCテイク講座」を1回、3月に「UDトーク&ポイントテイク講座」を6回実施し、計15名の参加があった。いずれもバリアフリー支援室支援コーディネーターが講師にあたった。 (1)6月19日(月)3名 PCテイク講座 (2)3月6日(火)1名 UDトーク&ポイントテイク講座 (3)3月9日(金)2名 UDトーク&ポイントテイク講座 (4)3月13日(火)2名 UDトーク&ポイントテイク講座 (5)3月16日(金)午前3名 UDトーク&ポイントテイク講座 (6)3月16日(金)午後3名 UDトーク&ポイントテイク講座 (7)3月28日(水)1名 UDトーク&ポイントテイク講座 (UDトーク&ポイントテイク講座風景の写真、サポートスタッフ募集ポスターの画像、「UDトーク&ポイントテイク講座」ポスターの画像あり) -----活動報告書12 3.4.3 ボランティアサークルとの連携 「しゅわっち」に所属するサポートスタッフの数名が、本郷支所・駒場支所で月2回開催している「手話でしゃべランチ」に参加した。また、支援室説明会への協力のほか、バリアフリー講習会での手話通訳を担う等の連携がなされた。 3.5 防災訓練・災害時対応 3.5.1 「非常用階段避難車 定期取扱講習会」の実施  階段移動に困難を伴う障害のある学生・教職員への緊急時避難対応の取り組みとして、非常用階段避難車キャリダンの「定期取扱講習会(年1回)」を、6部局において開催した。 3.5.2 その他 (1)防災訓練の実施依頼(通知)  バリアフリー支援室長から各部局長へ、防災訓練の際は、障害のある学生・教職員の避難も考慮して実施すること及び「障害のある学生・教職員の個別(チーム)の緊急災害時マニュアル」を作成した部局は、当該マニュアルに沿った防災訓練の実施と防災訓練後の個別マニュアルの検証を行うことについて、4月11日付通知にて依頼した。 (2)緊急災害時に車いす使用者等が利用できる仮設トイレについて  昨年度、緊急災害時に車いす使用者等が利用できる仮設トイレ(テント、ポータブルトイレ)を二次避難後の待機場所となっている駒場地区(アドミニストレーション棟1階)、弥生・浅野地区(農学部3号館1階)、本郷地区(支援室本郷支所)に整備した。現在、テントの設営マニュアルを作成しており、今後トイレ管理マニュアルを作成予定である。 (緊急避難機器「キャリダン」、「イーバックチェア」、車いす対応型仮設トイレの写真あり) -----活動報告書13 3.6 シンポジウム等事務又は事業への支援  学内で実施する講習会、授業、公開シンポジウム、公開講座等への手話通訳、PC文字通訳者紹介、音声認識アプリケーションソフト一時利用アカウント発行、申込み時の障害のある方への配慮に関する文言についての問合せ、支援機器の貸出等バリアフリーに関するアドバイス、情報提供を行った。 障害者差別解消法施行を境に全学周知を強化し、施行前との比較において対応件数は増加傾向にある。 【棒グラフ】公開講座・シンポジウム等における合理的提供 実施件数 2018年2月27日現在 縦軸は「件数」、横軸は、2015年、2016年、2017年各年の「内容」(手話通訳、PC文字通訳、車椅子貸出)。 手話通訳:2015年 5件、2016年 12件、2017年 18件 PC文字通訳:2015年 4件、2016年 7件、2017年 8件 車椅子貸出:2015年 3件、2016年 5件、2017年 10件 ※合理的配慮例のみカウントした。事前の環境の整備(ユニバーサルデザイン)による実施件数及び在籍する障害のある学生・教職員への提供件数は、含まれていない。 公開講座・シンポジウム等における合理的配慮提供に係る全学周知資料(例) 講演会等における配慮の例 1.開催案内(ポスター、ちらし、ウェブサイト等)記載例 東京大学オープンキャンパス2016(8月3日、4日)特設サイト 左側に「参加登録」を示す丸い円、右側に上から「参加に当たってのご注意」「キャンセルについて」「障害等のある方へ」「個人情報の取扱いについて」の項目がある。 「障害等のある方へ」に丸囲みがあり、そこから下に矢印が伸び、内容のアップが以下に示されている。 障害のある方へ 東京大学では、障害等のある者に対して、受験上および修学上必要な配慮を行っております。オープンキャンパス参加に際し、支援が必要な方は7月11日までに事務局へお申し出ください。なお、申請の内容によってはご希望に添えない場合もあります。あらかじめご了承ください。 2.配慮の例 1 車いすを利用する者が車いすのまま参加できるよう可動式のいす、テーブルを設置した会場や、段差がない(スロープを設置した)会場を使用する。 (左側に車いすのまま席に着くことができる可動式のいす、テーブルの写真、右側に車いすでの壇上へのアクセスが可能となるスロープ設置の写真あり) 2 視覚障害のある者等に対して、文字を拡大した資料又は点字翻訳、電子データ化した資料を提供する。 「電子データ化した資料」とは 資料などを、そのままの形式で読むことが困難な人のために、より利用しやすく読みやすい形式に加工する作業を指す。 以下に例が示されている。 画像データ ・資料をスキャンして画像形式(PDF、JPEGなど)にしたもの ・(特長)拡大・縮小が自在にできる テキストデータ(.txt) ・フォントやレイアウト等の情報がない文字だけのデータ ・(特長)音声読み上げソフト(スクリーンリーダー)での読み上げが可能、点字データへの加工も容易 (視覚障害のある方等が、音声読み上げソフトを使用して「音声で資料を聞く」ための加工です。) ポータルサイトにマニュアル掲載「視覚障害のある人が利用しやすいテキストデータの作成について」 詳しくは、バリアフリー支援室にお問合せください。 3 聴覚障害のある者等に対して、音声情報をパソコン入力により画面に表出させるパソコン文字通訳(手元のパソコン、タブレット又はスクリーン投影)を行う。 (左側にパソコン文字通訳のスクリーン投影の写真、右側にパソコン文字通訳者の写真あり) その他、音声認識アプリ「UDトーク」も試行中です。 何かあったらバリアフリー支援室までお問い合わせください。 -----end