---p18 (スライド1) 東京大学バリアフリーシンポジウム 高等教育における「繋がる支援」 谷間の無い支援を目指して 2022年2月9日(水)14時から16時30分 STEM領域での支援 並木 重宏(なみき しげひろ) 東京大学・先端科学技術研究センター namiki@rcast.u-tokyo.ac.jp (スライド2) 本日の内容 1.実験室での合理的配慮 2.先端研での取り組み (スライド3) 聴診の手順 聴診器をあてる→信号を聴く→診断する 〔写真あり〕聴診器(医師が子供に聴診器を当てている) www.storyblocks.com (スライド4) 聴診:支援技術の利用 聴覚に障害があるとき 聴診器をあてる→信号を見る〔注 強調〕→診断する 〔写真あり〕電子聴診器(患者の胸に当てている電子聴診器の管から細いケーブルがタブレットに繋がり、画面上に波形が表示されている。 www.medicalexpo.com (スライド5) 聴診:支援者の利用 上肢に障害があるとき 聴診器をあてる〔強調〕→信号を聴く→診断する 〔写真あり〕医師の耳に付けた聴診器の先を看護師(支援者)が患者の胸に当てている。 Jim Post氏 退役軍人医療センター;Gilmer(2019)The magazine for active wheelchair users (スライド6) 職務の内容 〔図の説明〕 左側に二重の円があり、緑色の中心円が「本質的なこと:診断する」、その外側の灰色の円が「合理的配慮の対象:情報の取得、機器の操作」を示している。 〔図終わり〕 ---p19 (スライド7) 科学者の本質は? 『視覚や運動機能に障害をもつ学生は,「物理的に」実験を行う必要はないが,実験の精確な計測をアシスタントに指示できる技術的・科学的な知識をもっている必要がある.〔下線始まり〕本質的なことは,実験を行うことではなく,知識やスキル,実験を観察するための指示を行うこと〔下線終わり〕である』 Sukhai et al. (2014) Ontario's Universities Accessible Campus (カナダオンタリオ大学協議会) (スライド8) 実験室での支援 合理的配慮 ・物品の移動 ・作業を代わりに行うこと ・実験データの記録 本質的なこと ・実験のデザイン ・実験データの解釈 ・トラブルシューティング Roberts, B. (2013). A lifeline for disability accommodation planning: how models of disability and human rights principles inform accommodation and accessibility planning (Queen's University, Doctoral dissertation) (スライド9) Geerat Vermeij (視覚障害・進化生物学) 〔写真あり〕 左:大きな貝殻を持って書棚の前に立つ男性(www.gulfbase.org) 右:地層断面を触っている二人の男性 フィールドワークでは支援者、白杖〔注 「支援者」に下線〕 助手が論文音読、点字メモ作成〔注 「助手」に下線〕 Mississippi State Univ (2020) “Meet Geerat J. Vermeij - Paleobiologist” (スライド10) Wamda Díaz-Merced (視覚障害・天体物理学) 〔写真あり〕 左:白杖を持つ全盲女性 右:檀上の大きなスクリーンの前に立ち発表する女性 20代で失明、信号を音に変換する可聴化技術を使い研究を継続〔注 「可聴化技術」に下線〕 International Astronomical Union; Diaz Merced (2016) TED (スライド11) 本日の内容 1.実験室での合理的配慮 〔注 薄い灰色の文字〕 2.先端研での取り組み (スライド12) 病気・障害のある科学者の調査 障害 肢体不自由/視覚障害/聴覚障害/発達障害/精神障害 病気 リウマチ/ライム病/全身性エリスマトーデス/多発性硬化症/筋ジストロフィー/ジストニア/ALS/SMA/筋痛性脳脊髄炎/線維筋痛症/エーラス・ダンロス症候群/脳性まひ/脊髄損傷/慢性疼痛/ポリオ/網膜色素変性症 「インクルーシブ・アカデミア」 https://idl.tk.rcast.u-tokyo.ac.jp/ 〔右下にQRコードあり〕 ---p20 (スライド13) 学生実験支援ツール 神奈川県立保健福祉大,東京大学教養学部化学部会,株式会社シルク・ラボラトリ 〔画像の説明〕 「学生実験支援ツール」のログイン画面。 青地の背景に白色の文字、白色の枠でメールアドレスとパスワードを入れる欄、その下に「ログイン」ボタンがある。 画面右下にPCや実験器具、白衣を着た研究者などのイラストが描かれている。 〔画像終わり〕 (スライド14) バリアフリー実験室 〔画像の説明〕 バーチャルリアリティ(VR)の画像 右下に、VRゴーグルを装着している車イスの男性の写真 〔画像終わり〕 株式会社GK設計/ヤマト科学株式会社 (スライド15) まとめ 実験室の合理的配慮 支援技術:方法を変えればできることがある 支援者:できないことは手伝ってもらう 障害があっても科学に参加することができる (スライド16) 以下参考資料 (スライド17) 合理的配慮の事例 (スライド18) 視覚障害 全盲学生が理学部を修了した事例(国際基督教大学) 補助役:支援学校の教員,ヘルパー:上級生,点字 〔写真の説明〕 左の写真:光を音に変える感光器 右の写真:光を振動に変えるオプタコン 〔写真終わり〕 国際基督教大学教養学部理学科「盲学生のためのプロジェクトチーム」編(1986)”明日への大学”続編,ICUにおける一盲学生の物理実験・化学実験履修の記録;柳楽未来(2019)手で見るいのち:ある不思議な授業の力.岩波書店; 特別支援教育 教材・指導法データベース. ---p21 (スライド19) 下肢障害 アクセシブルな生命科学実験室 〔写真の説明〕 左上の写真:電動車いすの男性 中央上の写真:マウスのみで操作できる顕微鏡を使っている男性 右の写真:車いすの高さにもハンドルが追加された緊急用シャワー 左下と中央下の写真:車いすでアクセスできるクリアランスを有したドラフト・洗面台 〔写真終わり〕 (スライド20) 下肢障害 生態実習:微生物の野外調査 〔写真の説明〕 右上の写真:電子顕微鏡で見た微生物 下3枚の写真:歩けない学生も用意されたロープで支援者と一緒に木登りをしてフィールドワークを行っている様子 〔写真終わり〕 TREE Foundation. “Tree Research, Education and Exploration", https://treefoundation.org/projects/reu-canopy-explorers/ (スライド21) 下肢障害 野外実習:アクセシブルな場所の選定 アメリカ地球科学会(Geological Society of America)は、毎年アクセシビリティを考慮したフィールドワークコース(Accessible filed trip)を実施。 開催地の検討や,テクノロジーの利用、移動時のバスの利用など,物理的なバリアの低減など多様な障害を考慮した、教育の方法を検討 〔写真の説明〕 左上の写真:馬と対面している電動車いす利用者たち 右上の写真:橋を渡る車いす利用者たち 左下と右下の写真:洞窟内でフィールドワークをする車いす利用者たち (写真終わり) アメリカ地球科学会、The International Association for Geoscience Diversity, https://theiagd.org/ (スライド22) 『Able Flight』インクルーシブな航空教育プログラム NPO法人、米国パデュー大学 障害に合わせて航空機を調達 これまでに42人の障害者がライセンスを取得 〔映像の説明〕 両手を持たない参加者が足で操縦している様子をキャスターが紹介している。 映像には「No Arms PILOT」の表示。 〔映像終わり〕 “Pilot Jessica Cox on Inside Edition". Youtube (スライド23) 下肢障害、聴覚障害 『Able Flight』インクルーシブな航空教育プログラム 〔写真の説明〕 左の写真:車いす利用者のコクピット。左下にアクセル用のハンドルがある。 右の写真:聴覚障害者のコクピット。横並びの座席配置。 〔写真終わり〕 Major WL, Tinio RR, Hubbard SM (2018) Able Flight at Purdue University: Case Studies of Flight Training Strategies to Accommodate Student Pilots with Disabilities. The Collegiate Aviation Review International, 36(2). (スライド24) 発達障害 自閉症スペクトラム症/物理学 〇具体的な指示 〇実験ノートの重要性(どの情報を記録するかの判断が難しい) 〇実験ノートへのフィードバック.具体的なコメントや例示 〇実験室のスタッフに,どの学生がASDをもつかを周知する(本人の承認) 〇配置など実験室に変化がある場合に周知 Hughes M, Milne V, McCall A, Pepper S (2010) Supporting Students with Asperger’s syndrome: A Physical Sciences Practice Guide. 〔画像あり〕 「Supporting Students with Asperger's syndrome」(イギリス物理科学センター, 2010 ASDをもつ学生への一般的な物理教育のガイド)の表紙。 ---p22 (スライド25) バーチャル実験室(Virtual lab) バーチャルリアリティによる実験室の再現 〇操作〔注 強調表示〕 基本的にクリックのみ 〇低コスト 実験ごとに10ドル,199ドルでフルアクセス 〇ゲーミフィケーション 現場の再現(犯罪捜査) 〇危険性が無い〔注 強調表示〕 失敗できる 〇学習効果 理解度は,リアルな実験室と変わらない(De Jong et al. 2013) De Jong, T., Linn, M. C., & Zacharia, Z. C. (2013). Physical and virtual laboratories in science and engineering education. Science, 340(6130), 305-308. 〔写真の説明〕 階段教室で学生たちがパソコンを開いて受講している様子。 〔写真終わり〕 (スライド26) まとめ 障害があっても科学に参加することができる 参加のポイント 支援技術:方法を変えればできることがある 支援者:できないことは手伝ってもらう (スライド27) 障害のあるノーベル賞受賞者 〔注 顔写真あり〕 Dorothy Hodgkin 車椅子、膠原病 イギリス 1964年化学賞 「X線開設による生体分子の構造決定」 Charles Jules Henri Nicolle ろう(聴覚障害) フランス 1928年生理学医学賞 「発疹チフスに関する研究 」 James Sumner 片手の欠損(利き手) アメリカ 1946年化学賞 「酵素の結晶化」 John Forbes Nash, Jr. 統合失調症 アメリカ 1994年経済学賞 「非協力ゲームの理論における均衡の先駆的な分析」 Carolyn Widney Greider ディスレクシア(失読症) アメリカ 2009年生理学医学賞 「テロメア・テロメラーゼによる染色体保護」 nobelprize.org (スライド28) 元素の発見 〔図の説明〕 元素の周期表。 障害のある科学者が発見した元素が太枠で囲まれ、表の外側に発見者の名前と障害種が示されている。 以下、元素記号(元素番号)、発見者の名前(障害種)の順に表す。 He(2), Pierre Janssen(Physical disability)-codiscoverd He O(8), Joseph Priestley(Speech disability) Mg(12)・Ca(20)・Sr(38)・Ba(56), Sir Humphrey Davy(Partially blind, chronic invaid) Ru(44)・Cs(55), Wilhelm Bunsen(Blind in one eye) Rh(45)・Pd(46), William Wollaston(Blind) In(49), Ferdinand Reich(Color blind)-codiscoverd In Pr(59)・Nd(60)・Lu(71), Karl von Welsbach Auer(Hard of hearing) Hf(72), Dirk Coster(Progressive spinal disease) Ta(73), Anders Ekeberg(Deaf, blind in one eye) Ra(88), Eugéne DeMarçay(Blind in one eye) 〔図終わり〕 Pierre Janssen〔注 写真あり〕 (1824-1907) 幼少期に事故で歩けなくなる 天体観測のため世界中を航海 Pagano, T., & Ross, A. D. (2015). Teaching Chemistry to Students with Disabilities: A Manual For High Schools, Colleges, and Graduate Programs. (スライド29) 病気・障害のある科学者の調査 障害 肢体不自由/視覚障害/聴覚障害/発達障害/精神障害 病気 リウマチ/ライム病/全身性エリスマトーデス/多発性硬化症/筋ジストロフィー/ジストニア/ALS/SMA/筋痛性脳脊髄炎/線維筋痛症/エーラス・ダンロス症候群/脳性まひ/脊髄損傷/慢性疼痛/ポリオ/網膜色素変性 「インクルーシブ・アカデミア」 https://idl.tk.rcast.u-tokyo.ac.jp/ 〔注 右下にQRコードあり〕 ---end